TOReDE主催「企業変革セミナー」AIと向き合う経営者のリアルな声を聞く

カトカミを運営するTOReDE(株式会社とりぎん地域デザインパートナーズ)主催の「企業変革セミナー」を開催しました。今回のテーマは「地域課題×生成AI」「地域企業の生存戦略」

パネリストには、生成AIの活用支援を行う吉井秀三さんと、鳥取市でガソリンスタンドなどを運営する株式会社トリベイ代表取締役社長の縫谷吉彦さんをお迎えし、前半は吉井さんから「生成AIの事業への生かし方」を、縫谷さんからはガソリンスタンド事業から発展させた「新規事業立ち上げの背景」についてお話しいただきました。

パネリストプロフィール

縫谷吉彦さん 株式会社トリベイ 代表取締役社長

1975年生まれ。1949年創業の地域密着企業としてエネルギー事業やコンビニ事業を展開する一方、地域課題解決に向けた新規事業にも注力。鳥取市と連携したシェアサイクル事業を推進し、2026年4月には宿泊施設「まちやどOTTORIえびすまち」を開業。地域交通と観光の活性化を通じ、鳥取の新たな魅力創出に取り組んでいる。

吉井秀三さん

東京のITスタートアップに創業から参画。上場後、新規事業開発責任者やM&A、子会社経営を経て、8年前に鳥取市へUターン。現在は、最新の生成AI技術を実務に即して実装する「現場目線のDX」を提唱。福祉現場から一般企業まで、AI導入・活用研修を通じて、実効性の高いDX支援を展開している。

ファシリテーター

齋藤浩文 カトカミ コミュニティマネージャー/株式会社とりぎん地域デザインパートナーズ(TOReDE)

1982年鳥取市生まれ、鹿児島大学院建築学専攻卒。鳥取銀行で融資商品開発等の法人営業企画を担う傍ら、まちづくり会社「まるにわ」を設立。鳥取駅前でのリノベーション事業を通じ地域課題の解決に取り組む。2021年からは同行で正式に認められた兼業を実践し、銀行員と経営者のパラレルキャリアを歩んでいる。

会場はほぼ満席となり、鳥取市内の経営者層におけるAI活用への関心の高さがうかがえました。

誰でも数分でカタチにできる、AI活用の「今」

最初に吉井さんからの生成AI活用についての鳥取県内で活用されている具体的な事例を元にレクチャーから始まりました。生成AIの機能が日々進化する中、簡単な指示で数分で作成できる観光PR動画、LP(ランディングページ)、シフト管理アプリ作成などが可能です。その手軽さと幅広い活用範囲に、「固定費3,000円ほどで動画を作成できる」と具体的な金額を挙げる吉井さん。動画生成に限らず、社内マニュアルの共有や新規事業に向けたインタビューの要約など、より身近な実践例も合わせてご紹介いただきました。

一方で、県内企業の課題は経営者や一部の担当者だけがAIを使いこなし、組織全体へ浸透していない企業が多いこと。吉井さんは、ツールの性能そのものよりも「誰でも使える具体的な事例」を社内に用意し、定期的に情報を持ち寄れる環境を整える重要性を指摘します。

さらに、社内の議事録の音声をAIに読み込ませて要点をまとめる、スライド資料へ自動変換するなどのトリベイでの実践例を取り上げつつ、次のように語りました。

「まずは業務のどこに時間がかかっているのかを具体的に洗い出すことが、AI活用の第一歩になります。その上で本当に重要なのは、何のためにこの仕事に取り組んでいるのかを整理することです」

縫谷さんからは生々しい数字も共有されるなど現地開催ならではの内容でした…!

危機を越えて見つけた、会社の存在意義

続いて登壇した縫谷さんからは、1949年創業のトリベイの歩みが語られました。2006年前後、規制緩和とセルフスタンド化の影響で売上が落ち込み、店舗の閉鎖を余儀なくされた時期もあったといいます。その後の経営改善によって業績は持ち直したものの、心には「このままでよいのか」という問いが残りました。

「地域に必要とされる存在になることが、一つのキーワードではないか」そう考えた縫谷さんは、2024年に全社員参加のミーティングを重ねて自社のパーパスを策定。「あなたに笑顔を わたしに誇りを まちに豊かさを」という言葉へまとめあげました。

パーパスの策定に伴い、人事評価制度を整えながら、地域の交通課題に応えるシェアサイクル事業や、まちなかの建物を改装したゲストハウス事業といった新しい取り組みに着手しています。以前検討していたグランピング事業の構想を白紙に戻した経験にも触れ、「新規投資を行う前に、会社の存在意義を明確にする必要があった」と縫谷さん。本業のガソリンスタンド事業と地域課題解決の取り組みを両輪で進め、最終的に自社の本業へ還元される循環の構築を目指しています。

組織で使いこなす、AIとの付き合い方

後半のパネルディスカッションでは、「組織で使う仕組みづくり」と「新規事業でのスピード活用」に焦点を当てた議論へ。AIは手軽にアウトプットを出せる反面、目的を見失いがちになります。パーパスという軸が定まっていてこそ、AIが事業の推進力になるという共通認識を得て、場が締まりました。

質疑応答では、「AIを社員一人ひとりに浸透させるためのアプローチ」「新規事業の検討にAIを活用する際の留意点」など、実務に即した質問が寄せられました。吉井さん、縫谷さんからはそれぞれ「小さな成功事例を作って横展開すること」「AIに依存しすぎず、自社の考えや仮説を明確にした上で活用する重要性」といったアドバイスをいただきました。

AIという新しい手段の可能性と、それを活かす基盤となる自社の「軸」。その双方を見つめ直す機会となったのではないでしょうか。セミナー後、参加者からは「自社に持ち帰って試してみたい」という声も寄せられました。

吉井さん、縫谷さん、齋藤さん。ありがとうございました!

AI活用はテクニック論に終始することもしばしばありますが、手段として使うためのまずは「何のために使うのか?」を明確にすることが重要だと改めて学びました。

カトカミでは今後も、地域ビジネスのヒントとなるイベントを企画して参ります。現場からは以上です!

(文:カトカミ コミュニティマネージャー江本&上條)